tokot_tokiko's blog

忍者になりたい

空はどこにでもある

夜半に雨が降ってきた。

雨音で目が醒めた。


午前3時。

猫も起きた。

にゃー、と催促の鳴き声。

私の頭を、前脚でトン、トンと叩く。

起きろ、ごはん。


(はいはい、わかりました)

皿にとり分けて、カリカリ食べているのをぼんやり眺める。


もう眠れないだろうな…。

あきらめてコーヒーを淹れた。


本棚から、『終わりと始まり』を取り出す。


ヴィスワヴァ・シンボルスカ著。

しばらく読んでいなかった詩集。


パラパラとページをめくると、10年前の出来事が思い出されて…、

でも、あまり辛くないことに軽く驚いた。


「いなくなるなんて、猫に対してすることじゃない」


突然、亡くなってしまった飼い主に対する、猫の無言の抗議と戸惑いをうたった詩。


またしても、いなくなってしまう存在に悩む、どうしようもない自分がいた。


いずれ来る不在に身構えて、距離を置いて、まったく懐かない猫のよう。

ほんとうは、すり寄りたいのに。

無鉄砲に近づいては、冷たく拒絶するあの眼に怯えて、退いた。


コーヒー、苦いな。


別のページをめくるとこんな言葉が。


「空はどこにでもある」

そうね。


鳥が囀り出した。


空はどこにでもあって…

その下で今日も一日が始まる。

何事もなかったみたいに。

空の下で寝そべりながら雲に見とれて、すべて忘れてしまう日が来る。